私たち一般社団法人福岡デンマーク協会のホームページにアクセスして頂きありがとうございます。
私は当法人の理事長の長阿彌幹生(ちょうあみみきお)です。
日常の暮らしや活動の中でデンマーク的視点からみた自分なりの気づきや感想などをご紹介し、皆様の暮らしや仕事に何かの参考にして頂ければと思っています。デンマークとは関係の無いようなエッセイもあるやもしれませんが、それも幸福という普遍的なテーマとして繋がっているものですので、拙文ですがお付き合いください。感想等頂ければ幸いです。また、私どものイベント等でもこのエッセイを種にして、お話が出来ることを楽しみにしています。

福岡デンマーク協会 理事長 長阿彌幹生


理事長エッセイ(15)

子どもが幸せに育つ条件

幸福度の高さは、子どもの幸せがカギ! 
 私はデンマークを毎年訪れていますが、それはデンマークには私たち日本人に見えなくなってしまった、人間としての本来の在り方が家庭や学校、地域に具現化されているからです。とても示唆に富んでいる国なのです。
 国際的な幸福度調査で何度も世界一になっているデンマークでは、幸福度の高さは、子どもが幸せであるかどうかと密接な関係にあるという考えが社会の隅々まで浸透しています。
 子どもの幸せは社会の幸せのバロメーターなのです。

各家庭の教育費負担が多い日本と比べて
 デンマークのGDP(国内総生産)対比が7.6%もあり、世界でも多い国です(※日本は3.59%でOECD加盟30ケ国中最下位)。この結果、少人数クラスや複数担任制の実現や、教師の研究時間の保障など実施され質の高い教育が行われています。
 学校は「専門性と社会性を身に付ける場」とされています。 
 「専門性」は知識や情報、技術であり、教師が担当し、「社会性」は「仲良く助け合う力」のことで、この部分はペタゴー(社会教育士)の役割です。この「社会性」と「専門性」がデンマークの教育での車の両輪として位置づけられています。

★近年の参考データはコチラを参照
 資料: GLOBAL NOTE 出典:UNESCO(UNESCO Institute)

誠実に対応する社会教育士の姿
 11月にデンマークで基礎教育学校(10年制の義務教育学校)を訪れたときに、低学年クラスで若い女性のペタゴー(社会教育士)が一人の児童を膝の上に乗せて、その話に耳を傾けていました。子どもは泣きながら何か必死に話しています。ペタゴーは穏やかな表情でずっと子どもの話を聴いていました。
 ペタゴーの泣いている子への誠実な態度や、その態度を他の子どもたちがしっかり見ていた様子などから、当の子どもの声を尊重することは勿論大切ですが、態度が見守る子どもたちのペタゴーへの信頼感や安心感に繋がっているということも大切なことだと思えました。もし自分が泣きたくなったら、ペタゴーは同じように向き合ってくれるだろうと・・・。

子どもたちが幸せに育つには、
意見や気持ちが尊重されること

 デンマークでも子どもたちの間で喧嘩やいじめは起きているが、ペタゴーが双方の意見をしっかり受け止め、話し合いを通じて関係の修復を促している。
 「いじめはダメ」と一方的に決めつけないで、どうしてそうなったのかを子どもたち自身が考え、仲良しな関係を再構築していくのを丁寧に見守っている。
 子どもたちが幸せに育つには、自分の意見や気持ちが尊重されることが大切な条件のように思う。このことで他者への信頼感が強まり、共に協力して住み良い社会を創っていこうとする力も湧いてくる。
 私たち大人が「尊重」という言葉を真に理解し、子どもと向き合えば、子どもは幸せに育ち、幸福な社会を築く大人に成長していくのではないかと思う。