私たち一般社団法人福岡デンマーク協会のホームページにアクセスして頂きありがとうございます。
私は当法人の理事長の長阿彌幹生(ちょうあみみきお)です。
日常の暮らしや活動の中でデンマーク的視点からみた自分なりの気づきや感想などをご紹介し、皆様の暮らしや仕事に何かの参考にして頂ければと思っています。デンマークとは関係の無いようなエッセイもあるやもしれませんが、それも幸福という普遍的なテーマとして繋がっているものですので、拙文ですがお付き合いください。感想等頂ければ幸いです。また、私どものイベント等でもこのエッセイを種にして、お話が出来ることを楽しみにしています。

福岡デンマーク協会 理事長 長阿彌幹生


理事長エッセイ(18)

“自立”を目指す子どもたち

毎年、デンマークに渡り教育、福祉、環境などについて視察を行っています。今回はデンマークの職業専門学校のことを紹介してみようと思います。

デンマークの高校進学率は50% 
 デンマークでは義務教育修了後、半数の子どもたちは高校に行かずに、職業の技術習得の道を選びます。
 そのため高校進学率は50%程度(※日本の高校進学率は97%)。義務教育期間中に、職場体験やキャリアカウンセリングなどを充実させて、自立に向けての計画を子どもの頃からしっかりと考えることを促しています。

学歴よりも実力重視 
 そのため、基礎教育学校を卒業する頃には、自分の進路が決まっている子がほとんどです。それでも決まらない子は10年生という制度を利用して、もう1年、自分の未来を時間をかけて考えることができます。
 日本のような「取り敢えず高校にでも行くか」とか「高卒の学歴を得る」などという目的での進学はありません。この国、デンマークでは、学歴よりも実力(技術や資格)の方が重視されるからです。

選んだ職種のスキルを習得、やり直しもOK ! 
 視察先の職業専門学校は、デンマーク全国に校舎を持ち、107の職種について2万人の子どもたちが学んでいます。訪れた校舎では、900名の教員と職員が7,000名の学生の職業訓練を行っているとのことでした。
 自らが選んだ職種についての専門的な知識や技術を3年間で習得します。実習にも給料が支払われます。スキルに応じて給料も上がるので、学びながらも自立に向けての意識も確立していきます。また、在学期間中に実習先の評価を得られれば、卒業後はそこへ就職する場合もあります。学校側も積極的に企業などと提携していて、実習先や就職先として繋がっています。
 一方で、途中からの高校への転校や、違う職種の資格取得に変更を希望する学生も出ます。そのような場合でも、職業専門学校と高校とに共通する単位が設けてあり、再チャレンジを容易にしています。やり直しのきくシステムが用意されているのです。

子どもたちの未来のために、常に改善が図られる社会
 今回は、建築のコースと美容師のコースの教室を視察しましたが、どの子も明るく楽しく、職業訓練に取り組んでいました。
 自らの未来を自分で決めて進んでいけることが、どんなに子どもの自信に結びつき、自立に向けた歩みになっているかを目の当たりにしました。 これらの仕組みは、この国の民主主義が生活全般に自他一体という互恵互助の理念として定着しているからこそ実現しているのではないかと思います。
 みんなが良くなるためにという考え方=民主主義の方向で、すべてのことが考えられ、組み立てられているのです。
 デンマークは「子どもを国の宝」として大切に育てています。そして彼らが自立して、幸 せな人生を歩んでいけるための仕組みを用意し、子どもたちの意見を反映させながら常に改善を続けています。職業専門学校はその一つの具体的な表れだと言えるでしょう。

※写真は美容師コースの実習風景。
 学校の近所のご婦人方の多くが、有料で利用されていました。