私たち一般社団法人福岡デンマーク協会のホームページにアクセスして頂きありがとうございます。
私は当法人の理事長の長阿彌幹生(ちょうあみみきお)です。
日常の暮らしや活動の中でデンマーク的視点からみた自分なりの気づきや感想などをご紹介し、皆様の暮らしや仕事に何かの参考にして頂ければと思っています。デンマークとは関係の無いようなエッセイもあるやもしれませんが、それも幸福という普遍的なテーマとして繋がっているものですので、拙文ですがお付き合いください。感想等頂ければ幸いです。また、私どものイベント等でもこのエッセイを種にして、お話しが出来ることを楽しみにしています。


理事長エッセイ(7)

ロウソクのある暮らし

デンマークは一人当たりのロウソクの消費量が世界一です。
家庭だけでなく、レストランはもちろんですが、いろいろな場所でキャンドルが灯されています。ロウソクの灯はデンマークの人たちの暮らしには欠かせないものなのでしょう。

 

蛍光灯の灯りではないデンマークの夜
私が最初にデンマークを訪れて驚いたのが、夜の様子です。
それは日本のように明るくないのです。
日本では夜の照明は、「蛍光灯」が主です。家も商店街も白っぽい明るい蛍光灯で照らされています。これが当たり前でしたから、デンマークで夜を迎えたときにとても暗く感じました。
でも、この暗さに慣れてみると、この方が落ち着くのです。頭が夜モード、つまり寝る準備モードになるのです。いい感じだと思えるようになります。

“ヒュッゲ(寛ぎの時)”が生まれる

そういうお国柄なので、電気も暗めの電球ですし、ロウソクも食卓などでよく使われています。
デンマークの百貨店で見たロウソクの品ぞろえには驚きました。
各家庭では、ロウソクの灯をテーブルの真ん中に置いて、ゆっくりと食事をして、今日一日のことなどを話しながらの“ヒュッゲ(寛ぎの時)”を過ごすのでしょうね。

ひと時代前の日本を思い出す
私の生活に蛍光灯が入ってきたのはいつ頃のことかと振り返ると、小学校の3年生か4年生の頃だったように覚えています。
それまでは裸電球の光の下で食事をしていました。
ロウソクはありませんでしたが、暖色系の光が夜の暮らしを照らしていました。停電もよく起きていましたので、その時はローソクが必ず使われていました。テレビもまだ無かった頃です。車も少なく、夜になると静かな時間が拡がっていました。デンマークでロウソクの光で食事をしていると、そんなことを思い出します。

あたたかな思い出広がる灯(あかり)
クリスマスの頃になると、デンマークのお店ではロウソク売場が活気づきます。
クリスマスの夜は蛍光灯の明々とした光よりも、やはり、ロウソクの温かい、ほの暗い灯の方が夢があるように思えます。
子どもたちの笑顔がロウソクの光に照らされて、和やかな家庭の雰囲気が思い浮かびますね。

親と子の温かな時間がある
デンマークの親子関係はとても親密です。その深い愛情を築くのに欠かせないのが“グッドナイトストーリー”と呼ばれている、就寝前の子どもたちへの本の読み聞かせです。
子どもたちの就寝の時間になると、親は子ども部屋に行き、絵本の読み聞かせをします。子どもたちはいそいそとパジャマに着替えて、ベッドに飛び乗ってきます。そして、親の優しい声で読まれるお伽(とぎ)の世界に夢を馳せます。親の温もりを肌で感じながら、安心して夢路をたどるのです。

そのような、穏やかで和やかな暮らしをロウソクは支えてきたように思います。
ロウソクのゆっくりとした時間が似合う。そんな暮らしを、一年中は無理でも、月に何日かを過ごしたいものですね。