私たち一般社団法人福岡デンマーク協会のホームページにアクセスして頂きありがとうございます。
私は当法人の理事長の長阿彌幹生(ちょうあみみきお)です。
日常の暮らしや活動の中でデンマーク的視点からみた自分なりの気づきや感想などをご紹介し、皆様の暮らしや仕事に何かの参考にして頂ければと思っています。デンマークとは関係の無いようなエッセイもあるやもしれませんが、それも幸福という普遍的なテーマとして繋がっているものですので、拙文ですがお付き合いください。感想等頂ければ幸いです。また、私どものイベント等でもこのエッセイを種にして、お話しが出来ることを楽しみにしています。


理事長エッセイ(3)

19歳の市議会議員、25歳の元市議会議員大いに語る!


4年前にデンマークから、なんと!19歳と25歳の政治家を招いて、福岡市で講演をしてもらったことがあります。
この時は鹿児島、熊本、長崎などから約200名の方が参加され、デンマークの進んだ取り組みや、若者たちの政治への関わりなどに熱心に耳を傾けてもらいました。
日本でも市町村議会の形骸化、空洞化が問題化していますが、その大きな要因は若者の政治への無関心です。若者にとって魅力のある政治とは、どういうものかを、この講演会レポートを再度ご紹介することで、皆さんにも考えていただければと思います。

子どもの権利条約批准20周年記念 デンマーク講演会

幸福度世界一のデンマークから学ぶ
「若者・女性の政治参加」

 ●2014年9月25日(木)
 ●福岡市中央市民センターホール

デンマークをはじめ北欧諸国の幸福度の高さが注目されている。
今回は「若者・女性の政治参加」というテーマでデンマークから講師を招いて講演会(主催:教育文化研究所 協力:福岡デンマーク協会)が開催された。


幸福度の高さは民主主義の成熟度と相関している

 基調講演はデンマーク在住50年、国民高等学校の理事長をされている千葉忠夫氏から「民主主義の基本的 理解」についてでした。
自由、平等、博愛という民主主義を構成する要素を説明し、日本の学校教育で政治用語としての「民主主義」ではなく、生きるための理念として普遍的なものとしての「民主主義」が紹介されました。

 特に、平等についての説明では、一枚のピザを均等に分けるのを平等と思いがちだが、空腹度に応じて分配し、費用負担はその分配量とは関係なく支払い能力に応じて支払われるのが、真の平等ではないかという問題提起がなされました。デンマークではそれを平等と呼んでいるそうです。

 

政治が身近にある社会
 基調講演の後はシーナW.ソーレンセン氏(25歳女性・大学院生)とラッセH.ピーダセン氏(19歳男性・市議会議員)からそれぞれ「女性の政治参加の意義」、「若者の政治参加の意義」という提言が行なわれました。選挙権と被選挙権がどちらも19歳からのデンマークで、二人とも高校生のときに立候補し当選した人たちです。

 ラッセH.ピーダセン氏は自分の家族問題に端を発し、高校生時代から学校運営への参画を始め、さらには行政の仕組みや社会意識の変革のために政治家を志したそうです。堂々としたスピーチに、子どもの頃から大人たちから愛され信頼され、意見表明が保障されてきたことをうかがわせました。政治と暮らしとの距離が近く、その地域を住み良くしていこうとする仲間意識や当事者意識の強さを彼の提言から知ることが出来ました。

 

「なぜ?」という探求する姿勢の大切さ
 第2部では福岡の若者とのトークセッションが行なわれましが、その中でシーナさんの「デンマークでは選挙権も被選挙権も18歳なのに、日本では選挙権(20歳※2014年当時)と被選挙権(25歳と30歳)の年齢が違っているが疑問に思わないのか?」という質問が出されました。
このことは、それを当たり前と思っていた私たちに、改めて「参政権」とはどうあるべきなのか、当たり前のように思っていることへの「なぜ?」という問いの必要性を痛感する良い機会となりました。

 デンマークの若ものたちの政治に参加し、社会を変えていこうとする情熱は、子どもの頃から未来を担う存在として、親や地域の人たちから愛され信頼され、その権利を保障されて育ったからではないかと思います。
民主主義とは、日常の暮らし中に根ざしてこそ、国民の生き方として具現化していくものではないでしょうか。

 若者の熱意と無邪気さがデンマークの未来をさらに幸せな国にしていくように思えてなりません。