私たち一般社団法人福岡デンマーク協会のホームページにアクセスして頂きありがとうございます。
私は当法人の理事長の長阿彌幹生(ちょうあみみきお)です。
日常の暮らしや活動の中でデンマーク的視点からみた自分なりの気づきや感想などをご紹介し、皆様の暮らしや仕事に何かの参考にして頂ければと思っています。デンマークとは関係の無いようなエッセイもあるやもしれませんが、それも幸福という普遍的なテーマとして繋がっているものですので、拙文ですがお付き合いください。感想等頂ければ幸いです。また、私どものイベント等でもこのエッセイを種にして、お話しが出来ることを楽しみにしています。


理事長エッセイ(5)

子どもにやさしい国。

「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」は、子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約です。
18歳未満の児童(子ども)を権利主体と位置づけ、大人と同様、一人の人間としての人権を認めるとともに、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な、子どもならではの権利も定めています。子どもの生存、発達、保護、参加という包括的な権利を実現・確保するために必要となる具体的な事項を規定。1989年の第44回国連総会において採択され、1990年に発効しました。日本は1994年に批准しました。

第2次世界大戦でナチスによって多くのユダヤ人が虐殺されましたが、子どもも容赦なく殺されました。最も大きな被害を受けたポーランドの発案により、世界中から法律家が知恵と心を寄せて未来を担う子どもたちの人権を守ろうとこの条約を作り、採択しました。現在ほとんどの国が批准、加盟、継承、署しています。

そのような中、日本では虐待事件が絶えません。全国の児童相談所は保護された子どもたちで溢れています。まだまだ子どもの権利が十分に保障されているとは言えない状況です。そういう意味でデンマークの子どもたちは、「国の宝」として、社会全体から大切に育てられています。

今回も私の自著「長阿彌幹生のデンマーク読本(教育文化研究所出版)から一部を抜粋及び加筆して掲載させていただきます。お楽しみいただければ幸いです。


子どもの人権が守られる社会の仕組み。

毎年訪問するデンマーク
 毎年、私が企画している研修ツアー(※毎年11月開催)で、デンマークを訪れては、福祉や教育、介護などの現場で実務を担当している人たちから、デンマークの取組みやその考え方などを学んでいます。毎回、多くの気付きや発見を得られて、実り多い訪問になっています。 

待機児童問題がないデンマーク
 その中の気付きを一つ紹介しましょう。
 それはデンマークは「子どもにやさしい国」だということです。
 コペンハーゲンを散歩していると、子どもの姿の多さに気が付きます。

 写真は保育ママに連れられて公園に遊びにいく子どもたちです。保育ママという子育て経験のある人が2人~4人の子どもを自宅で預かる仕組みです。この写真では、3人の保育ママが7人の子どもを遊びに連れていくところでした。
 デンマークでは夫婦共働きが普通ですので、保育に関しての仕組みが整備されていて、保育園の他にも、このような保育ママ制度があり、多くの家庭が利用しています。待機児童問題はデンマークでは起こりようがないのです。

家庭優先が活かされた仕事環境
 安心できる保育システムのおかげで、親たちは思い切り仕事に打ち込むことが出来ます。だからと言って「仕事人間」にはなりません。16時の終業時刻を過ぎると、一斉に仕事を終えて、保育所や保育ママのところに子どもを引き取りに行きます。
 デンマーク人はほとんど残業をしません。
 何よりも家庭、家族を優先して暮らしているからです。その結果、家で親子がゆっくりと過ごすため、愛情や信頼に満ちた親子関係が築かれています。

公共交通機関も乳母車で
 また、乳母車を押している人たちも多くいます。バスや電車に大きな乳母車が簡単に乗せられるからです。低床式の車両に加えて、乳母車用のスペースが用意してあるからです。自宅から公共の交通手段で、乳母車ごと乗車して、都心まで出かけることができます。

 乳母車が大きいのは、赤ちゃんが大きいからというよりは、赤ちゃんの居住性、快適性から大きめのゆったりしたものになっているようです。安定性があり、安全でもあります。
 この大きな乳母車を、夫婦が楽しそうに会話しながら押している様子は平和そのものです。両親の仲良しな様子や笑顔は子どもにとっても最適な環境です。
 ちなみにデンマークでは、赤ん坊を乳母車に乗せて、冬は防寒着を着せて屋外で昼寝をさせます。寒さに慣らすのと、長い冬には少しでも日光に当てるためだそうです。

人権の守りの中でたくましく育つ
 こんな様子を見るたびに、デンマークは子どもを大切にしている国だなあとつくづく思います。教育費も医療費も無料で、しかも宿題もテストもなく、子どもの人権を尊重し、子どもらしく、かつたくましく育つことを重視しているデンマークの考え方が、何気ない街の様子からも伺えます。