私たち一般社団法人福岡デンマーク協会のホームページにアクセスして頂きありがとうございます。
私は当法人の理事長の長阿彌幹生(ちょうあみみきお)です。
日常の暮らしや活動の中でデンマーク的視点からみた自分なりの気づきや感想などをご紹介し、皆様の暮らしや仕事に何かの参考にして頂ければと思っています。デンマークとは関係の無いようなエッセイもあるやもしれませんが、それも幸福という普遍的なテーマとして繋がっているものですので、拙文ですがお付き合いください。感想等頂ければ幸いです。また、私どものイベント等でもこのエッセイを種にして、お話しが出来ることを楽しみにしています。

福岡デンマーク協会 理事長 長阿彌幹生


理事長エッセイ(12)

幸福度の高さは教育の豊かさに比例する~デンマークから学ぶ

デンマークは先進国中GDP対比教育予算の最も高い国です(註1)。その結果、小人数学級(28名定員)や複数担任制などが実現しています。また、質の高い教育を保障するために教員資格取得には大学院(修士課程)修了が必要です。
デンマークの教育は「自ら考える」ことが中心です。教育目標を子どもたちが自立するために必要な力を培うことに主眼を置いているからです。それぞれの意見や個性が尊重されながら、専門性(知識・技術)と社会性(協力して社会を支える姿勢)が教育の両輪として進められています。

楽しく心が満たされる場所、それが学校 
 私が日本で不登校当事者の支援活動をしていることをデンマークの学校関係者に話すと、異口同音に「それは学校が楽しくないからだ」と言われます。
 デンマークでは、学校が子どもにとって、楽しく心の充たされる場所であることを目指して運営されています。同時に、フリースクール(私立の教育機関)やホームスタディ(家庭学習)なども教育の場として認められていて、多様な学びが保障されています。その結果、すべての子どもに「学ぶ権利」が保障されています。

高校進学率50%程度
 義務教育(国民学校)は10年間。6歳を0年生としてスタートし、15歳の9年生で卒業します。進級や卒業は子どもたちの成長、本人や保護者の意向も考慮しながら決められます。面白いのは10年生というクラスがあって、進路などを決めかねている子どものために、もう1年間在籍して将来を考えることもできます。
 デンマークは資格社会。学歴ではなく、何ができるかが問われます。そのため高校進学率は50%程度で、半分は職業専門学校に進学し、働くための資格や技術を身に付けます。途中で高校への転学、専門学校への編入等の進路変更もしやすく、自分の未来を安心して描ける教育制度になっています。
 また、大学院まで授業料は無料。加えて返済不要や無利子の奨学金が用意されていて、学生の生活保障も行き届いています。また働き始めても、退職して学び直すときにも奨学金や所得補償などの制度があり、いつからでも学び直すことが出来ます。生涯を通じて学びが保障されていると言えるでしょう。

日本の改革に役立てたい! 
 このような多様で豊かな教育の機会の保障は高い税金によって支えられています。「税金はみんなの未来への投資」という考えが国民に浸透していて、実際にも税収の70%が教育をはじめ福祉、医療分野に再配分され、協力し、支え合う社会づくりが進められています。
 私は毎年デンマークを訪れて、その高い幸福度を実現している考え方や仕組みを学び、日本の改革に役立てるにはどうしたら良いかを考えています。デンマークは特別に優れているわけではありません。当たり前のことを当たり前のように実践している国です。日本が当たり前のことを普通にできる国になるために、デンマークは多くの示唆を与えてくれる国ではないかと思います。

 
【註1】経済協力開発機構(OECD)2015年度発表データ:国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合は日本3.6%で30カ国中最下位だった。最下位は4年連続。最も高かったのは、デンマークの7.6%、2位ノルウェー7.5%、3位アイスランド7.0%、4位ベルギー・フィンランド6.4%と続く。