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私は当法人の理事長の長阿彌幹生(ちょうあみみきお)です。
日常の暮らしや活動の中でデンマーク的視点からみた自分なりの気づきや感想などをご紹介し、皆様の暮らしや仕事に何かの参考にして頂ければと思っています。デンマークとは関係の無いようなエッセイもあるやもしれませんが、それも幸福という普遍的なテーマとして繋がっているものですので、拙文ですがお付き合いください。感想等頂ければ幸いです。また、私どものイベント等でもこのエッセイを種にして、お話が出来ることを楽しみにしています。

福岡デンマーク協会 理事長 長阿彌幹生


理事長エッセイ(22)

政治の羅針盤としての「幸福」 (3)

ハッピー・シティーズでの経験 

 市民が幸せになると社会に様々な利益がもたらされます。そしてそれが世界の複数の都市で、市民の幸福を調査し、強化する動きにつながっています。

 ブリストルのハッピー・シティ・イニシアティブのようなプロジェクトでは、人々の行動に影響を及ぼすことで幸福に導くことに重きが置かれているようです。
 プロジェクトの主なメッセージは、アクティブでいるのは大切だ、自然の中で過ごそう、世の中を探究しよう、一生学び続けよう、と言ったものです。プロジェクトはまた、どうしたら幸せになれるか考え、ポジティブな体験や出来事に注目するように市民に促します。同時に、利他的行動をとるようにも働きかけます。自治体は毎年、貢献度の高い市民にハッピー・シティ・ポイントを付与しています。

 デンマークのモデル都市、ドラウアー市で、およそ1万4千人の市民のうち500人の幸福度についての表を作った経験があります。この目的は、「市民の生活の質を高める」という目標に向けた取り組みを行う上での基礎知識を築くことでした。
 ドラウアー市での調査結果は、「孤独」が自治体の幸福の中心課題の一つであることを示しています。自治体や住民と連携して、市民の孤独を減らし、生活の質を高められるような実行可能な取り組みを提案した結果、地元の高齢者センターへ足を運ぶ人の割合が3分の1以上上昇しました。

国の指標となる幸福のデータ 

 デンマークは、世界幸福度調査のまさにトップに位置しているのですから、幸福への関心の高まりは、国と企業にとって絶好のチャンスです。デンマークが中心的役割を果たすべき、国際秩序の転換期がやってきたのです。デンマークの社会モデルが、他の国にインスピレーションを与えることができるでしょう。
 2013年にコペンハーゲンでブータン※1のティンレー元首相と面会した際に、彼から「私たちが追い求めているものを既に手にした国がデンマークだ」と言われました。

 私が見る限り、デンマークにいる私たちが良い社会モデルの確立の最前線に立つ限り、幸福と生活の質は、私たちにとって重要な輸出ブランドになっていくはずです。

 2013年にOECD※2が発表した主観的幸福を測るうえでのガイドライン※3という報告書で、
「人々の選択を導き、政治を設計し、先に進めるために、主観的幸福についてのデータは、国の進歩を調査し、評価するのに既に使われている他の指標を大いに補完できる」としています。


※1
ブータン~国民総幸福量(GNH)を尊重する国
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol79/index.html

※2
OECD(経済協力開発機構)は、1948年に設立。日本も含め加盟国は47か国。世界経済の発展、途上にある地域の健全な経済成長、世界貿易の拡大に、寄与・貢献を目的として活動している。

※3
主観的幸福を測る :OECDガイドライン
https://rnavi.ndl.go.jp/mokuji_html/026632145.html
主観的幸福を測るうえでのガイドラインについて
https://www.akashi.co.jp/files/books/4238/4238_summary.pdf

~おわり~ 

 

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